全国明社情報

『平成26年度志民カレッジ・水俣フィールドワーク』ご報告 その2


●どぎゃんかせんといかん

地元学の研鑽……村丸ごと生活博物館 ~みなまたの元気な村づくり~

   
平成26年度≪志民カレッジ≫に参加させていただき、誠に有り難うございました。
  昨年、吉本先生の著書『地元学をはじめよう』[岩波ジュニア新書]を読ませていただいてから、「地元学」に強い関心を持ち始めました。

吉本先生の、「『地元学』は地元に学ぶことである。ないものねだりをやめてあるものを探し、地域の持っている力、人の持っている力を引き出し、あるものを新しく組み合わせ、ものづくり、生活づくり、地域づくりに役立てていく。それぞれの風土と暮らしの成り立ちの物語という個性を確認し、大地と人と自分に対する信頼を取り戻し、自分たちでやる力を身につけていく。地元学は水俣病問題で苦しんだ水俣が、住民協働で環境に特化して行動し元気を取り戻した中から生まれた。もとより、地元学はこうであるという進め方はない。やり方すら、地元の土地と人に合わせ開発していくからである。」という考え方に、大きな衝撃を受けました。

地元学と言うのは、フィールドワークという現場主義の研究方法です。現地のありのままを、生活学芸員さんや生活職人さんたちと対話や作業を通じて学び、現実的な体感、感動の連続です。机上の論理では知り得ないことを、より深く学ばせていただけました。

水俣市では、過疎化が進行し、その対策として「どぎゃんかせんといかん」との熱意から立ち上がった対策で、農山漁村地域に対し、住む人々と地域が元気になる生活の支援を行おうと平成13921日に「水俣市元気村づくり条例」を制定し、地域の自然・産業・生活文化を守り育て、≪元気な村≫を体験的スペースとして運営していく場としての『村丸ごと生活博物館』を、地域に指定しています。

280_4私たち一行は、920日(日)水俣市大川地区の“村丸ごと生活博物館”を訪れました。バスを降ると、色づき始めた稲の香りと、生活学芸員の大川生雄さんがお出迎え。台風の影響もあって、空は薄鼠色の雲が覆っていましたが、大地には棚田が広がり、彼岸花が咲き誇り、稲穂が黄金色に色付きはじめていました。まさに日本の原風景が、ここにありました。まずは、小学校分校の廃校跡に案内され、そこで大きな大きな水俣の地図を広げ、大川地区をこと細かに、レクチャーいただきました。その後、おいしい水を水筒に汲んで、屋根のない博物館の探検の始まりです。
                      270_4098_2

   121_2昨日の雨で畦道はぬかり、足元を草のしずくで濡らしながら、歩き始めました。向かったのは、昭和12年から国鉄が解体される昭和63年まで使われた、配線とループ線[単線山野線]の跡地。砂利の上を、一歩一歩、線路と枕木があったころを思い浮かべながら歩きました。
懐中電灯の明かりと、原事務局長さんの「足元、気をつけろよー」の声(だけ)を頼りに真っ暗闇の「トンネルを抜けると、そこは雪国…」ではなく、緑に覆われた草叢でした。トンネル内は自然の冷蔵庫。ひんやりした冷気が、一層恐怖感をあおりました。

一行はこの後、鉄橋の跡地を案内されました。この地上十数メートルの高さのある渓谷に架かる鉄橋。土手の上から見るだけでも怖くて、恐る恐る覗くだけ。この鉄橋を、学芸員の大川さんは「線路の上を歩いて反対側に渡ったんだよ」、誇らしげに語っておられました。
                 157_2        211_2

   棚田の畔を縦横無尽に歩きながら、再び分校の廃校に戻り、昼食をいただきました。村のお母さん手作りのお料理です。黒の漆器のお盆に、自慢の料理が並べられ、さすがの私も食べきれないかな?と思いきや、愛情が籠ったお料理は絶品!!見事完食してしまいました。
                 227_2         229_3

  267_3料理の生活職人[マイスター]、大川和代さんが、「このワラビはね、山で採って来たの」「どんなに喧嘩をしている夫婦でも、ワラビを採りに行こう!と言うと、仲直り出来るのよ」と、にこやかに語ってくれました。この村の夫婦円満の秘訣は“ワラビ採り”なんですネ。素敵ですネ。この何とも微笑ましい話題に、うらやましく、感動をさせられました。

また、これまでに訪れた方たちから、お母さんたちの手作り料理のレシピを教えて下さい!!と多数のリクエストがあったため、レシピ本を刊行!!その名も『我が家のまんま』、500円。これが瞬く間もなく、大ベストセラー・・・とまではいきませんが、すでに1000部以上も売れているということです。
   
114_3このレシピ本がまた面白くて、よく料理は“さじ加減”と言いますが、大さじ1、小さじ2、などの表記ではなく、たいがいが適宜、適宜の連発で、読者からは「どのくらいの分量なのか、どぅ作っていいのかわかりません」と、クレームの嵐・・・・。と、これは冗談ですが、村のお母さんたちからすれば「あなたのお好みで適当に」と、言ったところなのでしょう。
と、まぁ~こんな村の、こんな人たちが繰り広げる屋根のない博物館。この感覚は、都会で貨幣経済の損得勘定だけで生きてきた私たちには、とてもショッキングなこと。もっともっと目線を変えれば、幸せに生きる秘訣はたくさん、たくさんあるんだヨ、というメッセージのようでもあります。

また、この村には、JICAを通じてたくさんの外国人を訪れるそうです。外国の人々はこの素晴らしい原風景を見て「みんな“イッツ ビューティフル”って言ってくれるから、私のこと?と自分に指を指すと、笑われます。言葉は通じなくても、心は通うんですね」と、素敵な国際交流も展開されていました。このように、村の人々と訪れた人々の交流の中から、村の人々はこれまでに気づかなかった村の良さ、人の善さを発見できるのでないでしょうか?

194_3私たち一行も、生活学芸員の大川さんや生活職人のお母さんたちとの楽しい語らいの中で、仙台地区明社の新井さんは「トンネルの冷気を利用して、ワインクーラーにするといいのでは?」とか、同じく仙台の鈴木さんは「森林の間伐することで、森の資源が蘇ります」「そして、その間伐材を有効利用する方法を一緒に考えましょう」などなど、村に対する提言もさせていただきました。
   人間誰しも、自分の個性、生まれた持った良さというモノにはなかなか気づけないものですが、こうした交流の中で、一緒に語らうことで本来持っている素敵な個性を見つけ出せるのかもしれません。 ないものねだりではなく、あるもの探し。
   皆さんも一度、こんな素敵な“屋根のない博物館”を訪ねてみませんか?新たな自分自身を探すためにも・・・。

 

                      (八潮明るい社会づくり推進協議会副事務局長 渡辺 利行)